令和2年(その31)まで、令和元年・平成30・28・26・24年度疑義解釈資料入力済。

インフルエンザ患者に医師の登校許可・登園許可は不要?…「治癒証明書」から「治癒報告書」へ

インフルエンザの治癒証明

インフルエンザ患者が、登校・登園等を再開する際に求められる「治癒証明書」

しかし、実は学校保健安全法上は治癒証明は必須とされておりません。

本来、どのように対応すべきなのでしょうか。

厚労省によると、学校保育園等に関しては

【学校】

  • 学校から一律に証明書を求める必要はない(Web上のQ&A)
  • 具体的な取扱いは自治体による(Web上のQ&A)

【幼稚園・保育園・認定こども園】

  • 「医師が意見書を記入することが考えられる感染症」(保育所における感染症対策ガイドライン(2018年改定版))
  • 具体的な取扱いは自治体や設置者による(Web上のQ&A)

と、されており自治体や設置者によって異なっているのが現状です。

しかし、少なくとも厚労省から治癒照明を義務付けるような発信はされていません。

さらに職場に関しては

【職場】

  • 証明書を求めることは望ましくない(Web上のQ&A)

と、より否定的な方向性を示しております。

根拠規定は?

学校:「学校保健安全法」

学校保健安全法施行規則での規定は下記のとおりです。

(出席停止の期間の基準)

第十九条 令第六条第二項の出席停止の期間の基準は、前条の感染症の種類に従い、次のとおりとする。

一 …(略)

二 …(略)

  …インフルエンザ(特定鳥インフルエンザ及び新型インフルエンザ等感染症を除く。)にあつては、発症した後五日を経過し、かつ、解熱した後二日(幼児にあつては、三日)を経過するまで。

(学校保健安全法施行規則/電子政府の総合窓口e-Gov)

ここでは、出席停止期間を指定する規定はあるものの、出席停止を解除するために医師による治癒証明を必要とする規定はありません。

保育所:「保育所における感染症対策ガイドライン」

以前は厚労省策定の「保育所における感染症対策ガイドライン(2012年改定版)」で、

医師が記入した意見書が望ましい感染症

(保育所における感染症対策ガイドライン(2012年改定版)/厚生労働省)

として、インフルエンザが挙げられていました。

しかし、その次に改定された「保育所における感染症対策ガイドライン(2018年改定版)」では、

医師が意見書を記入することが考えられる感染症

(保育所における感染症対策ガイドライン(2018年改定版)/厚生労働省)

とされています。

もともとの(2012年版)でも一律に医師による治癒証明書を義務付ける書き方にはなっていませんが、(2018年版)ではさらにトーンダウンしていることが見てとれます。

他にももう少し具体的な記述がありますが、次の「インフルエンザQ&A」で語られるのでそちらに譲ります。

学校・保育所等:「インフルエンザQ&A」

そのものズバリのQ&Aです。

Q.19: 児童のインフルエンザが治ったら、学校には治癒証明書を提出させる必要がありますか?

 「学校において予防すべき感染症の解説〈平成30(2018)年3月発行〉」によると、「診断は、診察に当たった医師が身体症状及び検査結果等を総合して、医学的知見に基づいて行うものであり、学校から特定の検査等の実施を全てに一律に求める必要はない。治癒の判断(治癒証明書)も同様である。」とされています。
 なお、「保育所における感染症対策ガイドライン(2018 年改訂版)」によると、「子どもの症状が回復し、集団生活に支障がないという診断は、身体症状、その他の検査結果等を総合的に勘案し、診察に当たった医師が医学的知見に基づいて行うものです。罹患した子どもが登園を再開する際の取扱いについては、個々の保育所で決めるのではなく、子どもの負担や医療機関の状況も考慮して、市区町村の支援の下、地域の医療機関、地区医師会・都道府県医師会、学校等と協議して決めることが大切になります。この協議の結果、疾患の種類に応じて「意見書(医師が記入)」又は「登園届(保護者が記入)」を保護者から保育所に提出するという取扱いをすることが考えられます。」とされています。

(令和元年度インフルエンザQ&A/厚生労働省)

とされています。

ちょっと長いので端的に抜き出せば、

学校→特定の検査等の実施を全てに一律に求める必要はない。治癒の判断(治癒証明書)も同様。

保育園等→個々の保育所で決めるのではなく、市区町村の支援の下、地域の医療機関、地区医師会・都道府県医師会、学校等と協議して決める。

ということになろうかと思います。

職場:「インフルエンザQ&A」

こちらもそのものズバリです。

Q.18: インフルエンザにり患した従業員が復帰する際に、職場には治癒証明書や陰性証明書を提出させる必要がありますか?

診断や治癒の判断は、診察に当たった医師が身体症状や検査結果等を総合して医学的知見に基づいて行うものです。

インフルエンザの陰性を証明することが一般的に困難であることや、患者の治療にあたる医療機関に過剰な負担をかける可能性があることから、職場が従業員に対して、治癒証明書や陰性証明書の提出を求めることは望ましくありません。

(令和元年度インフルエンザQ&A/厚生労働省)

学校や保育園と違っていろんな法律が関わってこないせいかシンプルですね。

なにも縛りがないところでの厚労省の本音は

  • インフルエンザ陰性の証明は困難
  • 治癒証明のための検査や診察は「治療」ではない
  • (つまり)治癒証明を医療機関に求めないで欲しい

ということなのでしょう。

全国に先んじた沖縄県の動き

もともとは「新型インフルエンザウイルス」が取りざたされた2009年に厚労省や文科省で、「新型」インフルエンザの治癒証明について不要である旨が伝えられました。

沖縄県では、県や医師会、専門家などが話し合った結果、

  • 新型インフルエンザで治癒証明に意義がないのであれば、季節性でも同様

というコンセンサスのもと、医療機関に治癒証明書を求めることを控える動きになったようです。

2018年2月付で、沖縄県HPで

インフルエンザに罹患した場合、発症した後5日を経過し、かつ、解熱した後2日(幼児にあっては、3日)を経過し健康が回復すれば外出の自粛を終了することが可能であると考えられており、復帰に先立って医療機関を受診させ、治癒証明書を求めることは意義がないとされております。

そのため、沖縄県では、治癒証明書取得に伴う本人の負担や医療機関の軽減を図るために、別添写しのとおり教育機関において治癒証明書を求めることを控えるようお願いしているところです。教育関係者及び保護者の方々におかれては、ご理解とご協力の程よろしくお願いします。

なお、治癒証明書の代替として、保護者からの解熱の報告様式を参考までに作成しておりますのでご活用ください。

また、民間事業所で従業員が罹患した場合も同様ですので、併せてご理解とご協力をお願いします。

(インフルエンザ罹患に伴う治癒証明書を求めることについて/沖縄県)

と示されました。

まとめると、

  • 治癒証明を求めることは意義がない
  • 本人や医療機関の負担軽減のため、治癒証明書を求めることは控えてほしい
  • 治癒証明の代替として、治癒報告を使って欲しい
  • 民間(職場)でも一緒

というところでしょうか。

インフルエンザ治癒証明を不要とする取り扱いについて、先鞭をつけた格好となっております。

「治癒証明書」から「治癒報告書」へ

先ほどの沖縄県HPには

「なお、治癒証明書の代替として、保護者からの解熱の報告様式を参考までに作成しておりますのでご活用ください。」という記載がありました。

これは前述の、学校保健安全法の

「発症した後五日を経過し、かつ、解熱した後二日(幼児にあつては、三日)を経過するまで」という出席停止の規定を遵守するためのものと思われます。

治癒報告書・参考

沖縄県:インフルエンザ経過報告書(保護者記入).pdf

富山市:インフルエンザ治ゆ報告書.pdf

治癒証明書が提出されない場合は「出席停止」ではなく単なる「欠席扱い」とする学校もあるようで、今後これが治癒報告書だけですむとなれば、治癒証明をもらうためだけにわざわざ時間を作ったり診療費を払ったりする必要がなくなる分、患者側にとってメリットがありそうです。

全国的な動き

考え方として、インフルエンザについて「単に治癒証明書を記載してもらうためだけの受診」はそもそも保険診療の対象ではないのではないか、という見方があります。

2019年度は富山県でも沖縄県とほぼ同様の動きが見られ、今後全国的にも波及していく可能性、もしくは波及中の可能性があります。