2019年5月の10連休を例にしながら、祝日法を中心に休日加算の算定ルールを改めて確認します。
目次
「休日加算」とは?
まず、原則的なところを抑えます。
点数表の順番とは前後しますが、まずはその対象患者の要件。
(ロ) 当該休日を休診日とする保険医療機関に、又は当該休日を診療日としている保険医療機関の診療時間以外の時間に、急病等やむを得ない理由により受診した患者
つまり。
「休日」に「休診」している医療機関に「急病等やむを得ない理由」で受診した患者。
が対象ということになります。それ以外は原則的に算定不可。
ちょっと一例一例見ていきたいと思います。
- (例1) ×休日/○休診/○急病等 ⇒算定不可
- (例2) ○休日/×休診/○急病等 ⇒算定不可
- (例3) ○休日/○休診/×急病等 ⇒算定不可
- (例4) ○休日/○休診/○急病等 ⇒算定可
(例1)「休日」ではない場合
そもそも算定日が「休日」でなければ、算定できません。
例えば土曜日を含む平日に「休診」している時に「急病等やむを得ない理由」の患者を診ても、休日加算の対象とはなりません。
(例2)「休診」していない場合
では、「休日」に「休診」せずに通常通り診療していたとしたらどうでしょうか?
この場合も原則算定不可。
当然、患者が「急病等やむを得ない理由」の受診であったとしても休日加算の対象とはなりません。
(というか診療中の保険医療機関に急病で受診するのって普通ですよね)
ここで2点、注意しておきたいところがあります。
まず1点目。「休日」に「休診」しなかった日の診療時間外(つまり診療応需体制を解いた後)に来院した患者であれば、算定対象となることは抑えておいてください。
それから2点目。「休日」の診療であれば要件を満たせば「夜間早朝等加算」は算定できるのがポイントですので、「休日加算が算定できない=なにも加算は算定できない」と早合点しないようにしましょう。
(例3)「急病等やむを得ない理由」のない受診の場合
では、「休日」に「休診」していましたが、「急病等やむを得ない理由」は特にない患者が来院した場合は?
これも算定できないことになっております。
ただ、このパターンの場合、(例1)や(例2)と違って「なにをもってして『急病等やむを得ない理由』となるのか?」について個々のケースで議論の余地が発生するかと思いますので、個別に判断することになるでしょう。
あくまで個人的な見解ですが、「血圧の薬を切らしてしまった」なんていう場合は算定してもよいのではないでしょうか。
命にかかわるケースが無いとは言い切れないと思いますので、「飲まなくて良いから月曜に来てくれ」とは言えないですよね。
どう見ても「湿布薬の定期処方」にしか見えないレセプトなんかだと……どう取り扱われるべきかは議論があるところかもしれません。
(例4)「休日」で「休診」していて「急病等やむを得ない理由」の受診
この3つが揃ってはじめて算定可能となります。
再度言いますが、これが「原則」です。
青イカ
白イカ
例外1:救急医療の確保
まず、以下の通知をご確認ください。
(イ) 客観的に休日における救急医療の確保のために診療を行っていると認められる次に掲げる保険医療機関を受診した患者
①地域医療支援病院
②救急病院等を定める省令(昭和39年厚生省令第8号)に基づき認定された救急病院又は救急診療所
③「救急医療対策の整備事業について」(昭和52年医発第692号)に規定された保険医療機関又は地方自治体等の実施する救急医療対策事業の一環として位置づけられている保険医療機関
①や②はわかりやすいかとは思いますが、一見して少々わかりづらいのは③でしょうか。
噛み砕くと「医師会や自治体の休日当番・輪番制で診療を行う場合」と解釈して良いのではないかと思います。
これらの要件に当てはまる場合は休日加算の対象となるそうです。
が、地方によって取扱いが異なることも考えられますので、正確には自身で確認されることをおすすめいたします。
例外2:小児科特例
こちらも下記通知をご確認ください。
ア 夜間、休日及び深夜における小児診療体制の一層の確保を目的として、小児科を標榜する保険医療機関(小児科以外の診療科を併せて有する保険医療機関を含む。)について、6歳未満の乳幼児に対し、夜間、休日又は深夜を診療時間とする保険医療機関において夜間、休日又は深夜に診療が行われた場合にも、それぞれ時間外加算、休日加算又は深夜加算を算定できることとするものである。
なお、診療を行う保険医が、小児科以外を担当する保険医であっても算定できるものであること。
ということで、小児科を標榜した医院で6歳未満の患者を診た場合も休日加算の算定対象となります。
実は、2018年度の改定当初はここに「産科・産婦人科の特例」もあったのですが、炎上⇒凍結と相成りました。
なので、診療科の特例は小児科だけです。
休日加算の算定時間の取扱い
重複する内容も多いですが、年末年始を中心に休日加算の取扱いについてこちらの記事にも記載しています。
年末年始の休日加算、夜間・早朝等加算など今読んでいただいている10連休対応の記事の中では省いていますが、時間帯によって休日加算か深夜加算かという論点もありますので、そちらを確認したければ上記の記事がよいと思います。
「休日」とは?(10連休中の休日加算対象日)
さて、前置きが大変長くなりましたがここからが今回の記事の本番ですね。
新天皇即位に際して、2019年5月のGW(ゴールデンウィーク)が10連休となりました。
それに伴って、休日加算等の取扱いが一時的に変更されるかどうかが注目されていましたが、以下通知により「従前のとおり」とされました。
本年4月27日から5月6日までの10連休等の長期連休における診療報酬等の取扱いについて(保医発0130第1号)
ここで改めて、その「従前のとおり」の中身を確認したいと思います。
つまり、「休日加算」で言うところの「休日」って何?という話に立ち返りたいと思います。
したがって、この記事自体は10連休対応のために作成した記事ではありますが、この件に関わらず参考にできる機会はあるかと思います。なんせ「従前のとおり」ですから。
それではまいりましょう。
結論から言うと10連休の初日である2019年4月27日(土)だけが「休日」扱いにはならず、4月28日(日)から10連休最終日である5月6日(月)まではすべて「休日」扱いとなります。
詳しくは以下をご覧ください。
ア 休日加算の対象となる休日とは、日曜日及び国民の祝日に関する法律(昭和23年法律第178号)第3条に規定する休日をいう。
なお、1月2日及び3日並びに12月29日、30日及び31日は、休日として取り扱う。
第一に「日曜日」は「休日」。これに異論の余地はないでしょう。
第二に「祝日」も「休日」です。
第三に「年末年始」も「休日」となります。
「土曜日」や「お盆休み」は「休日」とはされていないことを確認しましょう。
ここまでは良いと思います。
さて。
実はもう少し詳しく検討する必要があるのが第二の「祝日」の項。
振替休日の規定など続きがあるのです。
実際に条文を確認しましょう。
第三条 「国民の祝日」は、休日とする。
2 「国民の祝日」が日曜日に当たるときは、その日後においてその日に最も近い「国民の祝日」でない日を休日とする。
3 その前日及び翌日が「国民の祝日」である日(「国民の祝日」でない日に限る。)は、休日とする。
第1項、「祝日」は「休日」ですね。わかりやすいです。OKです。
第2項、さらに「祝日」が「日曜日」に当たるとき、その日の後の最も近い平日を休日となります。いわゆる振替休日。振替休日も「休日」と規定されます。
第3項、その前日と翌日が「国民の祝日」である日は、こちらも原則「休日」となります。オセロみたいですね●○●
この記事の中では、便宜上この祝日法第3条第3項を「オセロ休日」と呼びたいと思います。
祝日法第3条第3項とか堅苦しいので。
※筆者が勝手に言ってるだけです。よそで言っても通用しませんのでご留意ください。
では、これらのルールを2019年5月のGWに当てはめるとどうなるか。
以下のようになります。
日付 | 曜日 | 休日理由 | 休日加算の対象 | |
---|---|---|---|---|
10連休 | 4月27日 | (土) | (「休日」ではない) | |
4月28日 | (日) | 日曜日 | ||
4月29日 | (月) | 昭和の日 | ||
4月30日 | (火) | オセロ休日 | ||
5月1日 | (水) | 天皇の即位の日(※) | ||
5月2日 | (木) | オセロ休日 | ||
5月3日 | (金) | 憲法記念日 | ||
5月4日 | (土) | みどりの日 | ||
5月5日 | (日) | 日曜日・こどもの日 | ||
5月6日 | (月) | 振替休日 |
※「天皇の即位の日及び即位礼正殿の儀の行われる日を休日とする法律」による
参考:内閣府|国民の休日 https://www8.cao.go.jp/chosei/shukujitsu/gaiyou.html
したがって、10連休の初日である2019年4月27日(土)だけが「休日」扱いにはならず、他は全て対象ということになります。
「休日」の対象要件以外の要件が合致した場合は、忘れず算定したいところです。
10連休における対応例まとめ
- 2019年5月のGW10連休は、初日を除くすべての日が「休日加算」の対象
- 「休日加算」の対象日であっても、当初より診療日に当てていれば「休日加算」算定不可
- しかし救急医療の確保や小児科の場合は特例で算定可能なケースあり
- 「休日」であれば、「休診」していなくても夜間早朝等加算が算定できるケースあり
といったところでしょうか。
付け加えるとすれば、投薬期間が1回14日までの薬剤は連休中に限り30日まで延長できる、ということ。
※これは、10連休に限らず、一般的なGW、年末年始、海外渡航などで認められています。
この件は需要あれば後で単独の記事にしようと思います。
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